4人戦スイスドローの数理考2013

昨年の記事 (http://d.hatena.ne.jp/gamedeep/20120527/1338128349)以来のご無沙汰です。

1年も経つと去年もあったような出来事がまた再び巡ってくるわけでありまして、ドミニオン日本選手権も今年の開催要項が発表されました。

昨年の記事で枕の話題にしました「なんでタイブレイカーが総得点なのよー」については、ヘッドジャッジ様より「本人が努力できる数字なので」という明解な回答をいただきました。実に明解な意図ですね。
終了タイミングをある種の人気投票で決めるマルチプレイヤーズゲームで総得点の多寡が本当に「努力できる範囲」なのかには疑問があるとか、「ぎりぎりの戦いを勝ち抜いてきた人が救われない」という感を抱いてしまうのですが、そういうのはゲームを(無駄に)深く考察してみるスタイルに起因する病気に過ぎません。実際的には2位以下(になりそうな)プレイヤーへの指針としては十分機能しますし、そもそもタイブレイカーなんて甲乙付難いところをなんらかの形で足切りをするための数字でしかないので、明確な意図があるならそれで十分だと思います。

前提

ということで今年の予選突破ラインについて考えていくのですが、いくつか条件を置かねばなりません

まあ要するに去年までと同じ形式ですよね、というのが前提です。
それから話を始める前の大切な準備として、去年の記事の最後で使った4人戦スイスドロー4回戦256人の場合の順位予測表を(少し伸ばした上で)改めて引用しておきましょう。

4-0-0-0 24P 1人 1位
3-1-0-0 21P 4人 2-5位
3-0-1-0 19P 4人 6-9位
3-0-0-1 18P 4人 10-13位
2-2-0-0 18P 6人 14-19位
2-1-1-0 16P 12人 20-31位
2-1-0-1 15P 12人 32-43位
1-3-0-0 15P 4人 44-47位
2-0-2-0 14P 6人 48-53位
2-0-1-1 13P 12人 54位-65位
1-2-1-0 13P 12人 66位-77位
2-0-0-2 12P 6人 78位-83位
1-2-0-1 12P 12人 84位-95位

今回の記事では数理的な考えはほぼこの表にだけ頼りますので、これだけ憶えておいていただければ以後の話は読めるはずです。

満員の場合

まずは理想状態、というか用意された定員が満たされていた場合にどうなるか、というのを考えたいと思います。
昨年は最大160名中30人だったので、単純な比率で言えば以下のような感じで、やや倍率としては上がっています。
 160:30 = 16:3 ≒ 5.3:1
 128:22 = 64:11 ≒ 5.8:1

ボーダーラインがどうなるかと言いますと、128人中22位は256名4回戦換算で44位相当です。先の表を参照するなら15ポイント上にラインが来ることになります。
これ、だいぶ厳しい数字です。なんと2-1-0-1ではボーダーライン上で、総得点での争いになるという過酷ぶり。自力で突破を決めるにはラウンド点16点を稼がないとなりません。

なにより不遇なのは、同着1位を取った時でしょう。直感的には同着1位を取れば全体のボーダラインも下がる……と考えるのは早計。1位順位点と2位順位点を足して頭割りする方式ですと、トーナメント全体に放流されるラウンド点は減少していません。同着1位を取ったことで偶然当確圏からボーダーライン上に下がったというケースを除けば、ボーダーラインへの影響は発生しないと考えておいたほうがいいでしょう。ですので、このとき受ける-1.5Pが大変に重くなります。
「1位を3回取る」のは確定の目安のはずなのですが、ここに同着1位が絡んでくると話が怪しくなってきます。もちろん1位-1位-同着1位の16.5Pあれば文句なく通過なのでありますが、同着が2回というレアな、とはいえ全体で1人ぐらいは陥りかねない状況になると話が変わってきます。
1位-同着1位-同着1位-4位だと合計15Pで、これはまさしくボーダーライン上となってしまいます。そして同着1位3回や、1位-同着1位-2位-4位で得られるラウンド点13.5Pとなれば、ボーダーラインにも絡めず敗退となることでしょう。

同率2位や単独3位を取った場合も、状況はかなり苦しくなります。ボーダーとなる15Pが1位点6Pの2.5倍というのが実に絶妙です。前回までのラインだと同率2位による2Pや単独3位による1Pが(1位2回による)12Pからボーダーライン越えを果たすまでの隙間を埋めるのにに有効に働いていたのですが、今回のラインだと2位による3Pでなければほぼ意味がありません。

より現実的に:110人の場合

とはいえ128人の定員が全て埋まるかというとそんなことは多分ありません。実際の参加者数は一昨年が208名、昨年も午前午後合わせて200名強でした。一昨年、昨年と参加者数はほぼ同数ですから、今年の参加者数も同程度に落ち着くと予測するのはそう非合理ではありません。ちなみに昨年の初日ボーダーラインは13P。105名中30位で計算してみますと256名中73位相当で、先の表に照らし合わせるとまさしく昨年の実績に合致しています。

念のため、少し参加者が増えると考えておき、110名ほどの場合を想定してラインを考えてみたいと思います。110名中22位256名中51.2位相当51位がボーダーラインに相当すると考えればよいでしょう。
先の表だと14Pが51位に相当します。昨年実績値より1P上がっていますね。

単独1位2回の12Pにもう2点を積めばボーダーライン上ということです。1位2回はほぼ必須条件だと言って良く、更にその上で残り2点強をどう確保するかという勝負になってきます。単独1位2回に単独2位1回を加えれば通過確定、同率2位1回か3位2回を加えられればボーダー勝負に乗っかれる――というのを楽と見るか辛いと見るかは微妙なところ。

昨年までならわりとなんとかなっていた同率1位ですが、今年のラインで同率1位を取ってしまうと(満員のときほどではないですが)かなり苦しいことになります。単独1位のときに比べて1.5点後退してしまうため「1位2回」に加えてもう3.5点を積まねばならなくなります。3.5というのは「2位1回では足りない」という数字です。同率1位は1位と言いながら、トーナメント全体のことを考えれば2位を取ってしまったことに限りなく近いと考えた方がいいぐらいでしょう。
同率1位2回は更に苦しいです。残る2戦で単独1位1回か単独2位2回、あるいは同率1位+3位以上のいずれかの成績を残さなければ14点の確保はできません。

通過ラインを越える裏技的ルートとしての「1位-2位-2位-2位」による15Pという道は今回も健在ですが、少し滑り落ちても良かった前回までとは違い、本当に踏み外せない薄氷の戦いとなります。2位のいずれかが同率2位1回ならラウンド点ではボーダー上という計算になりますが、2位を取り続ける=総得点が低めになる、ということですからタイブレーカー勝負では不利。やはり15Pを狙っていくしかない、という戦いとなるでしょう。


なお、(昨年一昨年の実績値に近い)105名だった場合、105名中22位は256名中53.6位相当となりますから、やっぱり14Pが必要という計算になります。昨年13Pで涙を飲んで今年も13Pぐらいかなと思っている方々(主に俺)におかれましては、事前に自分より強い人を10名ぐらい闇討ちして不戦敗に追い込むことでようやっとボーダーラインに乗ることができるという程度の過酷さですので、2日目に「大会」が開催されそうなゲームに目を付けて修行に励んでドミニオンのことを忘れていただくと、昨年ボーダーライン上で総得点足りなくて落ちた私が喜ぶかもしれません。

まとめ

  1. 初日通過ボーダーラインは14Pになるでしょう。
  2. 「15P取る」つもりで望んだほうがいいでしょう。
  3. 1位2回はほぼ必須です。
  4. 同率を取ってしまうとわりと死にます。同率1位は2位を取ってしまったのと大差ない、ぐらいに思っておいたほうがいいです。